一生黒歴史

俳優オタクのメモ書きです。

映画「ミッドナイトスワン」の感想

遅ればせながら観ました。
私は家の4Kテレビで観ましたが劇場で観た方が何倍も良いんだろうな〜と思いました。
(でもまあ私は特に深い理由もなくSMAPがそんなに好きなわけではないので、今過去に戻れてもお金を払って映画館では絶対観なかったとは思います。)

いろんなところに仕組みが散りばめられていて面白かったのでなんとなくのど素人の感想を残します!

 

まずりんと一果の対比、すごかった。
最初方のバレエレッスンで一果ちゃんが無表情でりんちゃんは明るい笑顔なのが印象的だったけどそれがどんどん逆になっていくのがすごい。「バレエを取ったら何も残らないのに」と言われた時のりんの表情。無表情も立派な表情だと思わされる感情表現でした。
途中で屋上での「なったよ」「なってないよ」を挟むのも良かった。あの時のキスが2人の明確な交差点なのかな。漫画の累のキスすると入れ替わるみたいなのをおもいだした。

 

あと部屋の暗いネオン側と部屋の明るい窓側の対比がすごい。
最初に凪沙は一果に「空いてるところどこでも好きに寝て良い」と言う、それで一果が選んだ場所が部屋の中でも印象的に描かれるキッチン、キッチンは暗く狭く、窓の向こうにはネオンが輝いていて、きっと今いる世界を明確に表すために意図的にネオンを置いているのだと思うけど、くっきり印象付けられる。で、前述の一果と凪沙の距離が縮まってきて一果がりんが言うところの「明るくなった」とき、一果が目を覚ます場所が部屋のリビング側、きっとベランダに面した大きい窓があるところで白く眩しい日差しが差し込んでいるのが、明るさの差を出すためにあえてキッチンは夜を印象的に見せているからなのか、あの朝のシーンで一果が、凪沙が変わったことが眩しくわかる。野菜を食べなさいと言ってくれる人がいることも愛だったと感じさせられる。
先述の一果とりんが交差していくと同時に一果ちゃんの生活の場所も部屋の明るい方へ移動していく、すごい。
最初はこんにちはとかありがとうございますも言えなかった一果がなぎさの愛情を受け止め始めて、一果の肩で泣くりんに頭を寄せる愛情表現をできるようになったときは思わず息を呑んでしまいました。
凪沙と一果の再会は衝撃的なシーンでしたがあの部屋は日が差して明るかったような気がするので、もしかしたら2人とも幸せだったのかなと思いました。

 

観る前に勝手に凪沙は最初から一果に愛情を持って接するのかと思っていたけど、そうじゃなくて結構びっくりした。徐々に関わって行くのが本当によかった。
「なんで私だけ」のシーンなどでそれぞれを線引きをしていた印象があるのですが、なんの交わりもなくただ同じ箱で暮らす全く別の人間だったなぎささんと一果ちゃんが、バレエ教室からの帰り道に一果を後ろから抱きしめる凪沙が言う「私達ちみたいなのは」で同じだったのだと感じさせられる、その後に凪沙の職場から同じ家に「帰ろう」って帰ったり、一緒のダンスを踊ったり、どんどん2人が同じになっていく美しい時間が流れる。そこに老人が現れてその時間に期限があることを突きつけられるの流れの緩急がすごくてジェットコースターだった。そこの白鳥の湖のリンクやばい。全然短い一瞬の出来事だけど、ふたりはこの時のことをずっと思い出すのかなと思えた。
そして最後、ラストシーンでは一果が凪沙に、凪沙が一果に、2人で一つの人間になったように感じさせられる。すごい。

 

あと言葉の説明がなくてもわかるように出来ているのかな、っと思ってそこもすごく面白かったです。
タイが写れば何をしに来たかは言葉にしなくても分かるし、あの廊下をあの格好のあのカゴ持った人が歩けば凪沙がどんな仕事しにきたのか感じざるを得ない。いらない説明台詞が何もなく、状況で全て解る様に出来ているの画の力もすごくすごいのかなと思いました。身分証とかがふとしたときに現実を突きつけてくるのが自然でリアルでエグい。すごい。

演技面も、中盤で髪を切ってめちゃくちゃ草彅剛やん、ってなるんだけど、そのあと見せる笑顔が凪沙そのもので美しいと感じました。
あと一果ちゃんの涙が流れていないのに心が泣いていることがわかる表情が素晴らしく良かったです。バレエで心が動かされる体験も初めてでした。見惚れてしまう。
個人的にはりんちゃんがすごく本当に好きでした。

ピアノの劇中曲のパワーもすごい。サントラ聴きたいと思いました。

 

遅ればせて鑑賞したけど本当に良い映画でした、地球上の人間全員に幸あれ